22 自己診断

 出生前診断は子どもを産むかどうかの決断に関わる。
 障害があれば、産む・産まないという決断ができるから。

 しかし人間、いつ障害者になるか分からない。
 人生の途中で障害を負うことを「中途障害」と呼ぶ。

 飛び降り王子が大学生の時、いつかは不明だが、脚に中途障害を負った女学生がいた。
 そのことを卒論にしていたのをよく覚えている。

 階段を上る時、両足を使って上らず、片足ずつ上るのに気づいた瞬間があるのだ。
 その時に「何で変な風に階段を上るの?」と聞いたら、障害を負っているのだと教えてもらった。
「変な風」という言い方は失礼だったが、障害を周りに感じさせないくらいアクティヴな女学生だった。

 車椅子アイドルの猪狩ともかさんも中途障害者だ。
 強風で倒れてきた看板の下敷きになり、腰を骨折した。
 彼女のことは、同じ脊髄損傷者として陰ながら応援している。
 彼女がボルト除去手術を受けたことはご存じだろうか?
 まず、ボルトを埋め込む手術をして、その一年以上経過後、それを除去するのである。

 この埋め込んで除去する手術方法なのだが、実はその必要性はない。
 王子は医者に問われた。
「ボルトを埋め込んで除去する手術と、埋め込んだままにする手術、二つの方法があるけど、どっちが良い?」と。
 除去する手術は比較的新しい手術で、予後が良いかは分からないと言われた。
 これ、決断できるだろうか?
 さっぱり分からないから医者に委ねた。
「決断できないよね?」
 と医者も察していた。
 その結果、ボルト除去をしない手術となった。
 当時は二度も手術を受けるなんてしんどくて堪らないからラッキーだと思っていたが、今では実はちょっと後悔している。
 当時は予後が酷かったから。
 ボルトを除去していれば、予後がもっと良かったのではないかと想像してしまうから。
 しかし、決断できなかったのだから後悔しても仕方がない。

 決断。
 本当に難しく感じる。
 三十六歳。
 人生の折り返し地点には来たが、一向に決断ができない。
 今後、どういう仕事をしたら良いのか?
 どう生きたら良いのか?
 全く見えてこないのだ。
 少なくとも、仕事をして、その後は酒を飲んで寝て、また起きて一生を終えるような人生は過ごしたくないと思っている。
 贅沢だろうか?
 自分にはもっと可能性があるのだと信じて止まないのである。

 文筆業で生計を立てたいが、現実は厳しい。
 仕事をしながら文筆を続けたいが、時間は限られている。
 その限られた時間内で執筆をして、一体どれほどの文章を世に残せるのだろう? おそらく「ちっとも」残せないだろう。
 もっともっと書かなければならない。
 王子は焦っている。
 焦ったからといって執筆が進む訳ではないと知っている。
 執筆を習慣付けたいのだ。

 昔は習慣になっていた。
 が、一度「自分には才能がない」と思いこんで折れた心はなかなか戻らない。
 脊髄損傷のように。
 いや、脊髄損傷ですら傷付いた神経はかなり回復したのだ。
 習慣なんてもっと簡単に戻るはずだろう。

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