三上との戦いで生命に関わるほどの重傷を負った健人は、今、病室のベッドにて収穫祭の録画放送を観ている。緑色の可愛らしい病衣をまとい、角度調整可能なベッドの調整ボタンを押して遊びながら鑑賞している。
個室の病室には、沢山のお見舞いカードや生花が女性的なセンスで飾られている。それはそれは数多くの友人・知人らが見舞いに駆け付けた。多くの仲間に愛されている健人のことが山田は羨ましかった。
戦いの後、秘密結社/Videoの支配下にある神林総合病院のICUに搬送された健人の緊急手術が行われた。失血量からして助かる見込みは極めて薄かったらしいが、健人はこうして生き残ってのんびり過ごしている。手術前や手術後、けたたましい喚き声を上げ続けていて、見るも気の毒な状態だったのもだいぶ昔のことのように思える。もう杖を突いて歩けるほどで、あとは傷口の完治を待つだけだという。
奇跡的なことだそうだ。
遙がいない時にはもう余裕綽々で女性看護師たちをナンパしているくらいである。病院食は素っ気なくて食べられたものじゃない、杏の手料理が食べたいとリクエストするくらい食欲も旺盛である。
地下鉄に轢かれて即死した三上の件が懸念材料だったが、何と彼は教団教祖室に自殺するという遺書を残していた。「沙羅、そして亡くなった両親を永遠に愛し続ける」ともしたためてあった。
彼から深傷を受けた健人も、三上は発狂していたのだろうと警察に告げて、特に損害賠償も請求しないということで後腐れなく終わった。沙羅にも警察の捜査が及ぶことはなかった。
とはいえ、彼女は大変だった。
残された海の教団と秘密結社/Videoを解散する重大な仕事が残っている。
甚大な精神的ショックを受け、それでも休めない状況で憔悴し切った彼女の顔は直視していられないほどやつれていた。
病室には健人と山田が二人きりである。
山田は来客用の椅子に座っているが、半分意識が遠のいていて、このまま眠ったら死んでしまいそうな気がしている。
開放されたままの入口から沙羅が入ってきて、大事な話があると山田を外へ呼び出した。意識朦朧状態で沙羅に付いていき、デイルームで話を聞く。
「健人ね、救急車で、自分の眼球を遙と山田さんにあげるための摘出手術を行ってくれって言ってきたの。何馬鹿なこと言ってるの、それじゃ盲目になるじゃないと言ったんだけど、盲目の探偵、格好いいじゃないかって言って。山田さんにもう少し頑張ってもらいたい。神の力で健人の素直な心を聞いてほしいの。大丈夫? 聞こえてるわよね?」
良かった、自分のような人間でも最後の最後に役に立てるんだ……。

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