※ネタバレあり。
一つの解釈を拒む映画。
割り切れぬ3.141592653589793238462643383279…………。
反対にいえば、多様な解釈を許す映画。
わたくしお好みの作品の傾向として「分かりにくい映画」というものがある。
たとえば『マグノリア』『バニラ・スカイ』などを挙げられる。
これはストーリー読解が難しい(ストーリーの順序の問題だったり、穴や過剰があるから)、という意味がまず一つ。
もう一つはそこからすくい取れる感情なり思想なりが複雑、という意味。
しかし、上の二作品は数回観れば、ストーリー自体はほぼ一通りに解釈可能。
このバートン・フィンクはストーリー自体の解釈が多様に可能。
わたくしは、分かりにくいものを分からないまま受け止めて、それでもなお傑作だと感じるからわたくしは惹かれる。
そこに大した解釈などない。
キュービズム期のピカソの絵を見て「意味不明だ・子どもでも描ける」と思う人もいれば、講釈を垂れる人もいる(解釈する)、そうではなくて、ただピカソを見て圧倒される、それに近い。
分かりにくくても駄作と感じるものは沢山ある。分かりにくくても傑作だと感じるのもある。結局、言葉を超えたところで観ているんだろう。
で、本作はわたくしの中で完全に「傑作」。
二回観た。
一回目では何も「解釈」できなくても、二回観たらさすがにわたくしなりの「解釈」がある程度固まってくる。
夢なのか現実なのか、その辺の境界線が曖昧な作品、ということを念頭に。
この映画は端っからオカシイ。
主役のバートン・フィンクは演劇の脚本家。
彼の演劇が絶賛され、「この劇の主役は役者じゃない。作者だ!」とまで言われてしまうところから始まる。脚本家が演劇の主役としてもてはやされるのは行き過ぎ感がある。
映画会社にスカウトされていきなりレスリング映画を書けと言われる。バートン・フィンクは小市民を描く作家なのに。
その映画会社の社長に、バートンは何も知られていないのに滅茶苦茶気に入られている。
レスリング映画を書けなくて苦悩しているバートンに、現代最高の作家と称される人物がご都合主義的に現れる。
あり得なくはない。でも何かオカシイ。
この映画がオカシイのは内容だけではない、ちょっとした映像にもオカシイところが表れている。以下は序盤の映像。

部屋の前に靴がずらっと並んでいる。
あり得ない。
※余談
キューブリックの『シャイニング』から影響を受けているのかな?と思ったのが、上の廊下映像と、脚本家の苦悩というテーマ。

何か似ているだろう。
余談終わり。
オカシイのはまだある。
隣室から聞こえてくる気味の悪い笑い声。
暑さでねっとりとはがれる壁紙。
不安定な映像から不安が伝わってくる。

なかなかに割り切れそうにない本作。
ところが、テーマは案外素朴なのだと気付かされる。
時代は1941年。日本とアメリカが戦う年。つまり、肉体が優先される年だ。
その時代における作家(精神)とは?
これがわたくしが捉えた、「肉体と精神」という単純な本作のテーマ。
バートンが書き上げた脚本のテーマは「魂とのレスリング」。おいおい、そんなの書いたら映画会社から怒られて当然だろうというテーマ。
脚本を書き上げたバートンが女性とダンスしている場面。
女性を出征兵士(肉体)に譲らなかったバートン(精神)は殴り倒される。
バートンの友人が肥満体であることは偶然ではない。
肥満体が「不自由な肉体の象徴」として描かれているからだ(耳から膿が出てくる病気だし、汗っかきで暑苦しい)。

わたくしの中でテーマを決定づけるセリフのシーン。

「精神の生命を見せてやる」
観ていると、唐突に感じるだろうこのセリフがテーマを象徴している。
このシーンは本当に笑えるからyoutubeも転載する。
そしてラストシーンの意味。

上の写真はバートンの部屋に飾られていて、彼がよく見ていた絵。
下はラストシーン。
絵の女性が目の前で絵のようなポーズを取って終わる。
その意味は?
おそらくは、絵から飛び出した、自由な肉体という意味。
一方、バートンが持っている小箱の中身は?
おそらくは精神。ちっぽけな精神。
でも小さいからといって意味がないわけじゃない、パンドラの箱のように沢山の何かが詰まっている。
彼が中身を確認しなかったのはきっと、まだその時ではないから。
肉体優先の戦争の時が終わり、精神の時代が来る。
映画内で、バートンはずっと精神の時代を求めてきたように思える。たとえ、バートンが小市民という身近な存在を描いてきたとしても、彼は肉体を表現する脚本など一切描けなかった。だから自身の作品に満足できなかった。
でも最後の場面、美しい女性の肉体を目の当たりにして、バートンは何を思ったのだろう?
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