04 無知の知

出会うタイミングが悪かった
 映画『ファイト・クラブ』のラストのセリフである。
 主人公の男性は不眠症を患い苦しんでいる。このタイミングで主人公はヒロインと出会う。程なくして、破壊衝動の化身のようなもう一つの人格が姿を現すようになる。やがて別人格は彼本来の人格をも乗っ取ろうとする。
 最後、別人格の仕業によって倒壊していく数多のビルを見届けている時、主人公がヒロインに放ったのが文頭のセリフである。物語を締めくくるに相応しい一言だなと非常に印象に残っている。

 しかし、些細なタイミングが人間関係なり人生の岐路なりを支配してしまうことは本当に多いように思う。

 現在、飛び降り王子は無職だが、こういう時にバリバリ働いている女性と知り合っても上手くいくことはまずない。一方、女性側も無職ならば傷の舐め合いのような共感が生まれて親しくなる場合もあるだろう。王子が正社員で働いている場合、女性と上手くいく確率は総じて高くなるはずだ。

 王子は23歳、文学の大学院に通っている時に五階から飛び降りた。
 精神的にも身体的にも最も辛かった時期。そんな大学院で知り合った人との関わりは、今、何と0である。リアルだけでなく、SNSでも一切繋がっていない。小中高大まででそんなことは一切ないから「タイミング」の重要性を見事に示している事例だと言えよう。

 さて、飛び降りるにもタイミングが大切だ。
 王子が飛び降りたのは六月四日の深夜だった。搬送された大学病院には外科担当の医師が不在。医師が来てMRI検査を終えるまでは水を飲んではいけないという。転落の衝撃で体は熱を帯びていて汗だく。酒を飲んでいたのもあって、喉はカラカラに渇いている。医者が来るまで数時間はかかると看護師から聞いたが、そんなに我慢出来る訳がない。頼むから水を飲ませてくれと看護師に哀願したほどである。結局、飲ませてもらえず検査が終わるまで我慢する羽目になった。

 また、飛び降りた曜日も悪かった。
 緊急事態でない限り、手術日は週に一度と決まっているらしい。
 すでにお察しだろうが、王子は丁度、手術日に飛び降りた。その日すぐにという訳にはいかないから、施術まで一週間も待たされたのだ。
 手術すれば楽になると思っていただけに、その日が待ち遠しくて仕方がなかった。施術後、麻酔が切れて人生最大とも言える激痛と戦う羽目になるとはつゆ知らず……。

 ちなみに、五階から飛び降りて生き残るとも全く思っていなかった。運が悪ければ車椅子生活になるということも知らなかった。万が一、生き残った場合、足や頭などを骨折するだけだろうと愚かにも思っていたのだ。

 教訓。
 何か重要なことをする時にはきちんと調べる必要がある。
 行動には勢いが大切だと言われるが、それも「十分な知識を得た上で」の話だ。それでも駄目だった時、タイミングや運の悪さのせいにしてしまえばいい。くれぐれも取り返しの付かない後悔だけはしないよう……。

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