抗酒剤という薬がある。
どんな薬かと言えばーー
アルコール分解酵素の働きを弱くし、酒を飲んだら悪酔いする体にしてしまう薬で、二種類ある。
一つはシアナマイド。即効性はあるが一日程度で効果がなくなる。
もう一つはノックビン。効くまでに一週間ほどかかるが、効果も一週間ほど続く。
前回の「32 清廉潔白」で、入院することに決めたと書いたが、一ヶ月間、依存症病棟に入院してきた(通常は1クール三ヶ月だが、それだと金銭面で困るので一ヶ月にしてもらった)。
今まで知らなかったアルコールについての知識を沢山学び、断酒の決意が固まった。
その知らなかった知識に、アルコールを抜けば抜くほど飲酒欲求が減っていくというものがある。
今日は抗酒剤を飲んで行きつけの居酒屋に行ってきたが、一ヶ月だけでも確かに飲みたいという欲求がなくなっていた。
あるのはテンションを上げたいなという気持ちで、それはいとも容易《たやす》く酒に結びつくものだが、それほど結びつかなかった。
一ヶ月の禁酒効果はてきめんである。
もう一つ知らなかったのは、脳はアルコールの影響を六ヶ月ほど受け続けるというもの(誰でもそうなのかまでは分からない。アルコール依存症の人はその割合が高いというだけかもしれない)。
今まで、十日くらいの禁酒は何度か自力で出来ていたのだが、心身に良いことがそれほどなかった。
「酒抜いても何も変わらねえな。なら飲んでもいいな」
という気分になるのも仕方がないのかもしれない。
ところが、入院も三週間ほど経過した頃、不眠や中途覚醒、過眠がいつの間にか治っていた。読書にのめり込めるようにもなった。入院前は「もう死んでもいい」という気分だったのに、気付けば生きる気満々になっている。
「あ! 本当にアルコールって抜けるまで時間がかかるんだ!」
良い効果を実感してしまえば、あとは造作もないものだ。
今後、どこまで状態が良くなるか自分の体で試してみたい、という思いが強くなり、酒なんてむしろ飲みたくないとまで思うようになった。
断酒を頑張りたい。
さて、アルコールの問題は飛び降り王子の自殺と無関係ではない、ということを今回の入院で感じさせられた。
というのも、当時、連続飲酒が止まらなかったのだが、飛び降りる一週間前から抗酒剤を飲んで強制的にアルコールを抜いていたからだ。
飛び降り決行の数日前から無性にイライラしていたのは、アルコールの離脱症状だった可能性が高い。
だとすれば、あの自殺は防げたのではないか?
離脱症状を抑える精神安定剤を増やす等の工夫によって。
「自殺の原因は~~だ」と特定したくなるのは人間の性なのだろうか。
沢山の体験を積み重ねてきた結果、ある個人が存在している。
特定された自殺の原因はその「きっかけ」ではあるかもしれないが、果たして「原因」だろうか。原因はもっと複合的なもののように思う。
自殺が「自分の」意志によるものだという言説も、間違いのように感じるのである。
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