4-2 群像劇(杏)
詩織と二人で帰宅した杏は玄関に並んでいる靴を確認した。見たことのない靴が三足並べられている。 居間に入ると、大輝と萌と美咲、斉藤誠の件で集められた三人が酔っぱらっている。 げっ、いたのこいつらかよ。「杏さん、おかえりー…
感じたものについて綴っていきます。
声だけの女
詩織と二人で帰宅した杏は玄関に並んでいる靴を確認した。見たことのない靴が三足並べられている。 居間に入ると、大輝と萌と美咲、斉藤誠の件で集められた三人が酔っぱらっている。 げっ、いたのこいつらかよ。「杏さん、おかえりー…
声だけの女
このところ、マグノリアの人の出入りが激しい。 喜ばしいことではあるが、そのせいで込み入った話がしにくくなって、杏は少しばかり困っていた。 山田といえば、蓮は事故死ということになっているにもかかわらず、自殺するなんてねえ…
声だけの女
教団教祖室の書棚は扉になっており、本で隠された部分に指紋認証式の鍵が備え付けられている。その奥にある打ち放しコンクリートの秘密の部屋には重要な資料が集められており、その存在は沙羅でさえも知らない。 その隠し部屋で、三上…
声だけの女
海の教団本部の三階中心部は五階まで吹き抜けの教会となっている。 祭壇の最奥部には深みのある青いカーテンがかけられているのだが、その折り目が規則正しくて美しい。この深みのある青は海を、規則正しい折り目は緩やかな波を再現し…
声だけの女
ひとひらが鳴いている。 その構造上、教団本部の球面状の窓は人が通り抜けられないくらいまでしか押しても開かない。 自室の窓を開けた沙羅は三五〇mlの缶ビールを片手に、その僅かなスペースから外の禍々しい雰囲気を感じ取ってい…
声だけの女
海の教団と出会うまでは塞いだ気分だった山田も、今では生暖かい風を軽快に切りながら蓮の形見をすっ飛ばしている。 その豊かな感受性が、またもや訪れた夏の空気を、夏には似つかわしくない枯れ葉のさえずりを、その朽ちた色合いを、…
声だけの女
マグノリア前の探偵事務所っぽくない丸文字の立て看板がなくなっている。 遙はチャイムを鳴らした。 以前と同じように杏の声がインターホンから聞こえた。以前と違うのは、待っていましたと歓迎されていることである。 ドアが開いて…
声だけの女
ひとひらが荒れている。 カーテンの閉められた寝室で毛布にくるまっている健人は、枕の上に置いたノートパソコンで馬券を賭けている。 外は雷が鳴り響くほどの大雨で、モニター越しからひとひら競馬場のダートもかなり渋っているのが…
声だけの女
ケンケンパ! の要領で小学からの親友の詩織が木蓮川を横切るための飛び石の上を器用に飛び跳ねている。 渡る力を失った遙は、川沿いの芝生に座ってその姿を眺めている。 向こう岸まで辿り着いた詩織が、同じ足の使いでこちら側に戻…
声だけの女
あるまま駅で落ち合った男とのかりそめの情事が済んだ。 駅近くにある人気だという焼肉店に連れて行かれたが、換気設備もろくに改修していない老舗店で、そのせいで煙の臭いが服に染み着いてしまった。肉の味が格別だったのは認めるに…
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