5-3 エビデンス(杏)
警察に証拠を突きつけて再捜査してもらおうという杏の目論見は、淡々黙々と運用されている法律の前で脆くも崩れ去った。検視が行われた結果、自殺という死亡診断書が医師によって作成されているのだから、新たな証拠がなければ警察は動…
感じたものについて綴っていきます。
声だけの女
警察に証拠を突きつけて再捜査してもらおうという杏の目論見は、淡々黙々と運用されている法律の前で脆くも崩れ去った。検視が行われた結果、自殺という死亡診断書が医師によって作成されているのだから、新たな証拠がなければ警察は動…
声だけの女
教祖室の球面状の窓を僅かに開くと、夜のひとひらの乾いた冷たい空気が怒濤の如く流れ込んでくる。整髪料で整えている三上の髪型が一瞬にして秩序を失った。沙羅からもうすぐ帰宅するという連絡があったため、三上は落ち着きを欠いてし…
声だけの女
元の環境に戻れば、緘黙も治るのではないかと沙羅は健人に伝えてきた。秘密結社/Videoという組織があるのだという。海の教団とは表向き独立していて、両方関与しているのは三上と沙羅だけなのだそうだ。 詳しいことは着いてから…
声だけの女
山田はマグノリアの二階寝室の窓を開けて夕空を眺めた。 まがまがしく滲んだ血液のように染められた空に低く浮かぶ茜色の巻雲は、地球の自転の法則に反しているくらいの速度で視界から去っては入ってくる。今にもバランスを崩して落ち…
声だけの女
沙羅に敵意を剥き出しにした杏はマグノリアから出て行ったきり、翌日も帰って来ない。山田はスマホで連絡を取ったが、流石に戻って来にくい、ちょっと時間置いてから戻るということだった。 健人と沙羅は行き先も告げずに二人で出かけ…
声だけの女
ボールペンを握った美白の手が文字を書いている。特別色黒ではないが白くもない杏がその手を羨望の面持ちで眺めている。ロングスカートからこぼれている右側に崩されたストッキング越しの両脚は非常に細くて、陸上で鍛えてきた杏の脚と…
声だけの女
平日の南ひとひら動物園は閑古鳥が鳴いている。 健人から電話を受け取った沙羅は、南ひとひらにいるから動物園でも行かないかと提案した。喋れればどこでもいいと納得した健人は車で向かうと言って動物園に来た。 窓口のアーチ状部分…
声だけの女
最近の情緒不安定、精神の異常なまでの移り変わりのせいで、沙羅は自分の起源を探すのに躍起になっていた。 母校である南ひとひら高校に行けば何かが分かるかもしれないと思い、当時と同じように地下鉄で向かうことにした。大通で乗り…
声だけの女
シンプルな掛け時計の秒針が時を刻むその音だけが、マグノリアの居間に響き渡っている。健人、遙、杏、山田の四人が居間で輪になっている。その真ん中にはピザがあるが、全く手を付けられないまま冷めて乾いてしまっている。パズルのピ…
声だけの女
なみだばね町の下見に何度か行っている間に、叶向は三上の意志を目撃したのだろう。 趣味で自費出版しようとしていた本のタイトルを急遽『入口と出口の哲学』に変更して、最終章も「腸内環境について」に内容を差し替えたという話を、…
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