3-7 墜落する渡り鳥(遙)
マグノリア前の探偵事務所っぽくない丸文字の立て看板がなくなっている。 遙はチャイムを鳴らした。 以前と同じように杏の声がインターホンから聞こえた。以前と違うのは、待っていましたと歓迎されていることである。 ドアが開いて…
感じたものについて綴っていきます。
声だけの女
マグノリア前の探偵事務所っぽくない丸文字の立て看板がなくなっている。 遙はチャイムを鳴らした。 以前と同じように杏の声がインターホンから聞こえた。以前と違うのは、待っていましたと歓迎されていることである。 ドアが開いて…
声だけの女
ひとひらが荒れている。 カーテンの閉められた寝室で毛布にくるまっている健人は、枕の上に置いたノートパソコンで馬券を賭けている。 外は雷が鳴り響くほどの大雨で、モニター越しからひとひら競馬場のダートもかなり渋っているのが…
声だけの女
ケンケンパ! の要領で小学からの親友の詩織が木蓮川を横切るための飛び石の上を器用に飛び跳ねている。 渡る力を失った遙は、川沿いの芝生に座ってその姿を眺めている。 向こう岸まで辿り着いた詩織が、同じ足の使いでこちら側に戻…
声だけの女
あるまま駅で落ち合った男とのかりそめの情事が済んだ。 駅近くにある人気だという焼肉店に連れて行かれたが、換気設備もろくに改修していない老舗店で、そのせいで煙の臭いが服に染み着いてしまった。肉の味が格別だったのは認めるに…
声だけの女
蓮の遺灰がゴーラス海へ舞い戻った後、今度は健人が灰になった。燃え尽き症候群というのか、寝室で寝込みがちになり、日常生活を送る気力を失ってしまった。体温計で測っても実際に微熱が続いている。 山田も蓮の死は流石に堪えたよう…
声だけの女
なみだばね町にて、蓮の葬儀はしめやかに営まれた。 自殺ということは伏せて、便宜上、水難事故と発表していても、まだ若すぎるということで多くの人がその死を惜しんだ。ひとひら大学の同級生や教授が、同じ小中高の同級生に先輩や後…
声だけの女
マグノリアの居間にあるシンプルな掛け時計が午前八時を指し示している。 一方、健人の頭の中はシンプルとはほど遠く、複雑すぎて心ここにあらず、という状況だった。もう二日以上も経っているというのに蓮が帰ってこないのだ。ソファ…
声だけの女
ジューッという美味しそうな音を響かせて運ばれてきた熱々のハンバーグから飛び散る油を防ぐために、蓮はナプキンを目の前に大きく広げた。そのナプキンの先には、黒いワンピースを着た沙羅が確かにいる。 面と向かうと上手く喋れなく…
声だけの女
ブランド物の本皮の長財布も黒。 黒いワンピースが似合う沙羅と共通点があるように感じて蓮は嬉しくなった。もし、ワンピースで来たらどう脱がせば良いのだろう? バンザイのポーズをしてもらうのは何かみっともない気がしてならなか…
声だけの女
立ちこめていた暗雲は消え去り、外は一転して快晴となった。 僅かばかりの白い帯状の雲が、青空をのんびりと流れている。 太陽は丁度、本部入口付近に日陰を作り、健人は車をそこまで移動させた。その後、外でタバコを吸いながら蓮が…
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