1-10 マグネット/マグノリア(杏)
マグノリア二階の寝室で、ベッドに仰向けになっている寺原杏はスマホで出会い系サイトを覗いている。メールボックスにあっという間に溜まった百件近くのメールを流し見して、文面がまともな男のプロフィールを読む。 雨音が響いてくる…
感じたものについて綴っていきます。
声だけの女
マグノリア二階の寝室で、ベッドに仰向けになっている寺原杏はスマホで出会い系サイトを覗いている。メールボックスにあっという間に溜まった百件近くのメールを流し見して、文面がまともな男のプロフィールを読む。 雨音が響いてくる…
声だけの女
ひとひら競馬場で、山田弘寿《ひろとし》は苛立ちを隠せないでいた。 ナミダミチモクレンの単勝に五万円賭けて、最後までハラハラさせられた挙げ句に勝ったはいいものの、最終オッズが1.0倍という結果を見て、こんな馬鹿げたギャン…
声だけの女
「ナミダミチクライ、六連勝!」という見出しが、ひとひら毎日新聞の一面に躍っている。競馬に興味のなかった健人もこのサラブレッドの写真越しでもはっきりと分かる黒光りした筋肉質な馬体にすっかり魅せられている。 あと一戦で中央に…
声だけの女
「今日の講義、良かったよね?」 大道《おおみち》蓮は隣の席の友人にニーチェ哲学の講義についての感想を求めた。彼の指は細長くて、蓮にはグロテスクに見えたが、こういう指が女性受けするのだと思うと不条理さを感じた。自分の指は短…
声だけの女
翌日、遙は自宅から徒歩五分のゲストハウスのように大きな二階建ての家の玄関前に来ていた。黒板調の立て看板に、黄色いチョークを使って「川端探偵事務所 どんな調査でもご相談ください。料金要相談」と女性の丸文字で書かれてあるの…
声だけの女
地下鉄南北線でひとひら駅から北に三駅進んだところが、ひとひら大学附属病院前駅である。自然と融合した附属病院はオフィスビルだと言っても誰も疑わないほどの幾何学的な高層建築物で、孤高にそびえ立っている。 幼い頃から虚弱体…
声だけの女
洞窟を潜り抜けて外へ出ると、健人の一番好きなコバルトブルーに街が灯っている。「いいぞ、もっと泣け。痴話喧嘩して出てきたように見えて都合がいい」「じゃあもう泣かない」 周りを見渡しても二人が見つからない。タクシーを拾っ…
声だけの女
ひとひらの歓楽街あるままは、国内外から多くの人が押し寄せる国内屈指の観光地である。 駅から地上に上ると、種々雑多な人々でごった返すあるまま交差点に出る。 その一角にあるビルには巨大なマンボウの看板が掲げられている。ある…
声だけの女
「社長、神林《しんりん》駅の件は検討していただけたでしょうか?」 海の教団の教祖・三上雄平は、古谷《ふるや》鉄道の社長・古谷修《おさむ》と二度目の交渉に臨んでいた。ひとひら駅併設のタワービル内にある古谷鉄道本社の社長室内…
声だけの女
ひとひらの街はゴーラス海に面している。 人々は豊富な海の幸に恵まれたこの海の幸運を愛し、敬い、そして感謝している。また、ある人はその神々しさを崇拝し、ある人は擬人化して友のように喋りかける。 その崇拝している団体の一つ…
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