3-3 同情のモンスター(杏)
蓮の遺灰がゴーラス海へ舞い戻った後、今度は健人が灰になった。燃え尽き症候群というのか、寝室で寝込みがちになり、日常生活を送る気力を失ってしまった。体温計で測っても実際に微熱が続いている。 山田も蓮の死は流石に堪えたよう…
感じたものについて綴っていきます。
声だけの女
蓮の遺灰がゴーラス海へ舞い戻った後、今度は健人が灰になった。燃え尽き症候群というのか、寝室で寝込みがちになり、日常生活を送る気力を失ってしまった。体温計で測っても実際に微熱が続いている。 山田も蓮の死は流石に堪えたよう…
声だけの女
なみだばね町にて、蓮の葬儀はしめやかに営まれた。 自殺ということは伏せて、便宜上、水難事故と発表していても、まだ若すぎるということで多くの人がその死を惜しんだ。ひとひら大学の同級生や教授が、同じ小中高の同級生に先輩や後…
声だけの女
マグノリアの居間にあるシンプルな掛け時計が午前八時を指し示している。 一方、健人の頭の中はシンプルとはほど遠く、複雑すぎて心ここにあらず、という状況だった。もう二日以上も経っているというのに蓮が帰ってこないのだ。ソファ…
声だけの女
ジューッという美味しそうな音を響かせて運ばれてきた熱々のハンバーグから飛び散る油を防ぐために、蓮はナプキンを目の前に大きく広げた。そのナプキンの先には、黒いワンピースを着た沙羅が確かにいる。 面と向かうと上手く喋れなく…
声だけの女
ブランド物の本皮の長財布も黒。 黒いワンピースが似合う沙羅と共通点があるように感じて蓮は嬉しくなった。もし、ワンピースで来たらどう脱がせば良いのだろう? バンザイのポーズをしてもらうのは何かみっともない気がしてならなか…
声だけの女
立ちこめていた暗雲は消え去り、外は一転して快晴となった。 僅かばかりの白い帯状の雲が、青空をのんびりと流れている。 太陽は丁度、本部入口付近に日陰を作り、健人は車をそこまで移動させた。その後、外でタバコを吸いながら蓮が…
声だけの女
静謐なロビーで、山田の陽気な笑い声だけがソファから響き渡っている。健人が、山田の顔色がだいぶ良くなっていると指摘した。薬の効果はてきめんのようだ。沙羅にもハイテンションで礼を告げてくる。「沙羅、蓮が話があるってよ」 に…
声だけの女
沙羅は山田の猫背を蔑むような目で見て、三上との会話を立ちながら聞いていた。 この男はقوة الله(神の力)の使い手だという自覚も大してない。その能力も麻雀で使う程度だとは宝の持ち腐れにも程がある。こんな弱々しい中年…
声だけの女
心落ち着かせる電球色で灯された、だだっ広い本部一階には清潔感のある受付嬢が一人きり。健人が受付カウンターに腕を乗せて、こちらの要求を突きつける。「どうも。教祖の三上さんと話がしたい」 あまりにも単刀直入な要求に受付嬢も…
声だけの女
準備が出来てマグノリアを出ようとした時、健人の顔がいつもと違うことに山田は気が付いた。 パーマをかけた、肩まで伸びた長髪は普段と変わりない。いつもは、伸ばし続けたもみあげが頬と鼻の下と顎を通って、反対側のもみあげと繋が…
最近のコメント